寝たきりの身体障がい者・石山直樹さんが新入社員、テレワークで働く片山社会保険労務士事務所

石山直樹さん(手前)と雇用主の片山展成さん

 

新入社員は寝たきりの障がい者。2018年11月、社会保険労務士を目指して勉強中の34歳を採用。自宅でテレワークという形態で働くスタッフが所属する片山社会保険労務士事務所。いったいどのように仕事をしているのか。自宅の仕事場を訪ねた。

テレワークとは、情報通信技術を活用し場所や時間にとらわれない働き方のこと

 

石山直樹さん

1984(昭和59)年、札幌市生まれ。重度の身体障がいを持って生まれる。脊髄性筋萎縮症。寝たきりの生活ながら通信教育で学び、2010年、日本福祉大学の通信教育学部を卒業。2017年3月には27年間入院していた国立病院機構八雲病院を退院。その4月、子どものころから同じ病院で時間をすごした車椅子の女性と結婚。札幌の実家で両親とともに過ごす。34歳。

 

 

「ずっと働きたかった。ぼくにとっては願ったり叶ったりのできごと」。「34歳の誕生日を目前にして、長年の夢でもあった『社労士事務所で働く』ということが実現しました」(石山さん)。

きっかけは、インターネットで社労士事務所を検索していた時。あるホームページに「テレワークを実践している」という文字に目が止まった。片山展成(かたやま・のぶしげ)さんの事務所・片山社会保険労務士事務所のサイトだった。

Facebookメッセンジャーで同事務所代表の片山さんに連絡を入れた。夢の実現にむけた第一歩となった。

石山さんは社労士の勉強をしているものの、どこかで実務をやってみたいなと漠然と思っていた。「なにかお話が聞けないかな」と思い、意を決して社労士の片山さんにメールを送った。2018年10月2日のことだった。片山さんはその文面から、誠実な人柄や論理的思考能力が高いことを感じ、メールによる“面接”をかさねた。

片山さんの懸念は「パソコンをつかってどのくらい入力ができるのか」と、いったスピードに関すること。すると石山さんから自身の入力スピードを録画した動画が送られた。安心した片山さんが採用を決定。11月から新入社員として仕事をすることが決まった。

「ITや技術革新がハンディキャップを埋める。社労士の資格取得勉強をしているから知識もある。法律用語をわかっているので、まかせても安心」と片山さんは太鼓判を押す。

 

 

目視入力でパソコンに文字を打つ

 

石山さんは寝たきりの生活だ。ヘルパーさんが自宅に来て、身のまわりの世話をしてくれるというが、移動は自身を乗せたベット型電動車いすのハンドルを動かし器用に操る。

パソコンは、寝たままで操作できるよう、画面を下向きに設置。ディスプレイキーボードを使って目視による視線入力と、ワンキーマウスの両方で文字を入力する。

事務所で指揮をとる片山さんとは普段、グループウェアのチャットワークを使い、文字と電話で業務をやりとりする。打合せ内容は録画録音機能のあるアプリを使い、正確なコミュニケーションにつとめている。

 

社労士資格にも挑戦

 

石山さんは社労士の試験にもチャレンジしている。かれこれ5〜6年挑みつづけているが、あと一歩のところで合格できずにいる。

受験のきっかけは、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得したこと。20代の半ば、通信制の大学であと1単位取得すれば卒業できるという時。「なにか1単位の科目がないかな」と、探していたところ、FPの科目があった。

FPの資格をとったものの、仕事はなかった。次に「なにかないかな」と。社労士の資格取得勉強なら「働く」ということについて学べると思った。勉強はつづけようと思っていたところだったので、社労士試験に挑むことにした。

最初の年はさんざんな結果に終る。そのくやしさをバネに今日も勉強に励む。試験勉強は、パソコンの画面にテキストや問題集を映し、ひたすら目で読んで覚える。この繰り返し。

ちなみに、試験当日は、担当官が立会いのもと、口述で回答していく方式だそう。

 

 

念願の会社員となって半年

 

社労士事務所に入社して半年が経った。担当の会社も受け持ち、現在、法務・会計プラザに所属する会計事務所の給与計算は石山さんの仕事だ。新入社員の社会保険加入手続きなども手がける。

在宅でパソコンをつかってテレワークで働いてみて、「パソコン入力をもっと早く、スピードをあげて仕事をしていきたい」と抱負を語る。目標は「まずは社労士の試験に合格することです」と話す。

石山さんは妻や両親といった家族の支えに感謝しながら、目の前の仕事を精一杯こなす。働ける喜びを感じて、次なる目標へと挑む。

 

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