佐藤則昭(さとう・のりあき)さん
(株)北海道アプレイザーズ・ファーム
鑑定部部長
—出身はどこですか?
1967(昭和42)年、増毛町の生まれです。高校を出て、最初に入った会社は札幌の不動産鑑士定事務所でした。鑑定士は高校の先輩という関係。大学は行くつもりはありませんでした。留萌高校を卒業して地元・留萌で就職するんだろうなあと思っていました。しかし、なかなか地元で就職が決まらず、学校に貼ってあった求人票を見て知りました。最初は不動産屋さんかなあと思っていたほどでした。
—仕事をしながら夜学で学ぶ?
この事務所の鑑定士がとてもいい先生でした。「この業界は向き不向きがあるので、大学だけは行きなさい」と。昼間は働いて、夜、大学に行きましょうか、ということになり、4年間、北海学園大の夜学(2部)に通いました。自分で働いたお金で学費を払って学びました。仕事は朝9時から17時まで。その後、大学へ行き18時から21時ごろまで講義。当時は下宿に住んでいたので、帰って一人寂しい食事をとって、なんだかんだと深夜0~1時を過ぎて寝るといった生活でした。資格には挑戦したのですが、残念ながら取れませんでした。
—その後に移動?
その鑑定士の先生は50歳代だったのですが、病気で事務所を閉じることになったのです。結果的に2年くらいお世話になりました。その先生の紹介で2つめの鑑定士事務所に移りました。そこは複数の鑑定士がいる事務所でしたが、2年くらいで解散。その中の一人の先生に声をかけて頂き1991年から21年間お世話になりました。その先生が高齢になり会社を縮小することになり、職探しも覚悟していました。不動産鑑定士は全道に100人位で、そのうち7~8割が札幌圏に集中しています。先生同士はだいたい知っている関係。そんなつながりの中で、今の事務所を紹介してもらい、2012年に入社。わたしにとっては4つ目の鑑定士事務所になります。今までとは件数的にもケタが違うくらい、結構忙しくしています。近年は相続、M&Aに関する仕事が多いですね。税理士、弁護士、不動産業者などからの依頼が多いです。
—仕事はどのようなものですか?
事務所は変われど、やっている仕事内容は、ほとんど同じです。今は少なくなりましたが、昔は裁判所の競売物件が多かったです。鑑定士が複数いた事務所では常に40〜50件の案件を抱えていた時代もありました。競売の仕事は、執行官と同行し、法務局の図面を基に、土地は形状や地勢、建物は間取りや設備、損傷等の有無を確認します。間取りは簡単な図面を作成します。評価書は6〜7枚にまとめ、現地調査に行ってから1~2週間で仕上げます。
—評価・鑑定はどのように?
不動産の評価は、土地・建物の価格を積み上げる原価法、実際の取引事例と比較する取引事例比較法、その不動産の収益性に着目した収益還元法等の手法があり、これらを併用して行います。不動産の価格は、利用方法、取引の事情等により各当事者で捉え方が異なります。鑑定士の評価も鑑定士により異なります。もちろん、合理的に説明がつく範囲でのことですが、各鑑定士の考え方により、高めになるか、低めになるか、理論的に説得できる判断を鑑定士それぞれがしますので、鑑定した価格が大きく異なることはないですが、一致しないのも当然のことです。
高校卒業からこの業界にお世話になっています。わたしは、取引事例と比較したり、収益を分析したりといった、数字を扱う作業が好きなようです。現地に行って間取りを書くことも嫌いではありません。ちょっと神経質なところがあるので、時間を要しますが。
—仕事の喜びはどんなこと?
依頼者がいての仕事です。ある程度ニーズに応えながらわたしどもにできる範囲で、「こういうかたちになりました」と数字をとりまとめます。その時に「こういう数字を出していただいて、ほんとうにありがとうございました」と感謝される時が喜びですかね。依頼者の笑顔が見られた時は本当に良かったなと感じます。わたしどもが出した数字を元に、税務署に申告したり、相手方と交渉したりと、その中で「あの時に鑑定してもらったものが、このようにうまくいきました」というお話しを聞けると、やりがいを実感します。「仕事の喜び」は、依頼者の役に立ち、感謝されることに尽きるかと思います。
—1件として同じものがない?
実務としては、事前準備、現地調査、役所調査、資料の収集・分析、価格査定となります。その案件をどういう方向でどう結論づけるか、という流れも考えます。最終目的地は一緒でも、導き方は1件1件すべて異なり、ひとつとして同じ仕事はありません。結果として同じになることはあっても、プロセスは全く違うものです。作業としては同じような過程をたどりますが、案件はそれぞれ違うので常に新鮮な気持ちで向き合うように心がけています。
—今後の抱負は?
10年後を想像すると、仕事内容も依頼のニーズも変化してくると思います。どういうものが出てくるのかは現時点ではわかりませんが、どんなニーズにも応えられるような、そんな鑑定士事務所でありたいと思っています。個人的には、依頼者の立場になって考え、お役に立てることを追及し、最後に笑顔になって頂けるよう、ミスなく、きちっとした仕事をしていきたいと思っています。
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