高齢者施設に入れない?! 家族や親族に迷惑をかけずに終活する方法

就活アドバイザーの田澤利明さん

終活アドバイザー 田澤利明

 

老後の生活に大変化が

これまでの老後は、自宅である年齢まで過ごし、一人あるいは家族の支援だけでは生活できなくなったときに、入院したり介護施設に入ったりする。その直前にモノの整理や遺言などを作るという作業や準備が「終活」でした。

しかし、今は、社会の状況が大きく変わってきました。男女とも65歳くらいまではほとんど全員が仕事を持ち、家族構成にかかわらず、家事も含めて身の回りのことは自分でしていく時代に変わってきています。独居世帯がかなりの勢いで増えてきています。

 

多くの人が住み替えをしていく

人間、歳を取ると体力・筋力が低下し、昔できたことがだんだんできなくなってきます。そうなると、長年住み慣れた郊外の一戸建てを売って、集合住宅(マンション)や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」といった高齢者施設にでも移ろうかと考える人が増えています。

サ高住は自由度もあり、食事のレベルも高く人気です。最後の時までをずっと自宅で過ごす人は、今の時代、ほとんどいません。

大多数の人は病院に通っていくうちに、「だんだんもう無理だから介護施設にお世話になろうか」と、次の居住先を探します。

 

住まいを替えるきっかけは食事

夫婦で暮らす場合、奥様(あるいは夫)がなんらかの理由で食事の用意ができなくなった時。こういう時が住まいを替えるきっかけになります。ほかには、家庭内で歩くことが困難になった時です。

在宅で介護を受けている人も介護認定度が上がれば状況に対応して、各種の老人ホーム、グループホームや老健施設といったところへ入居していくことが多くなります。

 

どういう人が困るのか

息子や娘、あるいは親戚などが近くにいる場合は安心です。しかし、そういった身内がいない人はちょっと困ることが発生します。

それは、高齢者施設のほとんどは、入居に際して「連帯保証人」や「身元引受人」が必要になるからです。こうした連帯保証を、年齢の近い友人や知人にはなかなか頼めません。

では、どうするか。法人企業に契約で行うサービスが登場しています。

 

連帯保証を契約で解決する

「一般社団法人全国シルバーライフ保証協会」という法人があります。この協会では、高齢者施設の入居や入院の身元保証を契約で行うサービスを提供しています。

入居費用などの連帯保証や、退去時の現状復旧に関する連帯保証。退去する時の、身元引受や残した荷物などの搬出・廃棄なども行います。

入院の場合には、入院費用の病院に対する連帯保証はもちろん、入退院の手続きや入院の時に使う生活用品の手配なども行っています。

 

もしも認知症になったら

いまや、65歳以上の7人の1人が認知症になる時代。認知症は特別な病気ではなくなりました。しかし、この認知症と判断されるといろいろやっかいな問題が発生します。

生活や介護に必要なお金を自分の意思でおろせなくなったり、資産である住宅や土地の売買ができなくなったりするのです。認知症と判断される前に、自分で判断できるうちにいろいろな準備や段取りを進めておくことが終活において大切です。

 

認知症で困るケースは

身寄りがいなくて、独り暮らしの人が認知症になった場合は少々困る場合があります。お金はあっても資産は勝手に動かせなくなるので、施設に入ることもできなくなるのです。

もし、こういうケースの場合は、市や区の介護包括センターのスタッフなどが「成年後見人制度」の申請をすることになります。

申請が下りるには、長い場合、半年とかの期間が必要になります。この間はヘルパーなどの依頼もできないのです。人によっては、ちょっとつらい生活を余儀なくされるかもしれません。

 

モノの整理はかんたんではない

多くの人は病気や介護度が進むと、自宅を出て、入院を経て介護施設に入居します。そうするとだんだん住まいの面積が小さくなる。持てるモノは少なくならざる得ないのです。

しかし、思い入れがあるモノは最後まで持っていたいと希望される人が多い。なにも整理しないでいると、ある日突然、それらのモノを処分しなければならなくなるケースも出てくるのです。

例えばですが、レコードが好きな人がいました。施設に入るにあたって「なんとかしてほしい」と。買取業者に依頼して処分することを提案しました。すると「売ってお金がほしいわけではないんだ」と。もちろん捨てられるのは困る。「誰か使ってくれる人を探してほしい」と。結局、レコードを聞かせることを売りにしている飲食店を探して引き取ってもらいました。

本をたくさん所有していた人の場合。蔵書の処分代だけで120万円もかかったケースもありました。

 

処分にはきっかけが必要

実は、なかなか少しずつモノを捨てていくことは難しいのです。どれを捨てどれを残すのを選ぶかは、歳を取るほど難しくなります。それまできれい好きだったの人が、身の回りにモノがたまってくるのは、よくあるパターン。かたづける上で肉体的な力も必要ですし、「これはどうしよう」という判断ができなくなってくるのです。

独り暮らしでは通路があるだけでモノがいっぱい出ている、という人は普通なのです。

 

依頼人の終活全般をサポート

一般社団法人北日本シルバーライフ協会では、依頼者に代わって財産も管理します。大切な預貯金の収入と支出を管理。介護事業者と協議をして、その後のケアプランを確認します。なくしてはならない重要な契約書類などもしっかりと保管してくれます。

 

費用の目安は

当協会に依頼する人は、「入居や入院で身元保証が必要になった」という人が約半分。この場合は、契約金が43万円(公証役場手数料は別途必要)。月々6,000円。

身元保証料は、入居施設の月額施設費用に応じての負担になります。例えば入居費用の月額が10万円以下の場合は身元保証料は30万円。10万円〜15万円以下の場合は35万円です(いずれも税別)。

 

万が一の葬儀はどうするか

葬儀について、「(自分の)葬式を(将来)やってほしいのだが」という人がいます。人間、タダでは死ねないのです。死んだ後、葬式をするにはお金が必要です。もっとも費用がかからない「直葬」と呼ばれる宗教者を呼ばないやり方でも20〜25万円ほどは必要です。「家族葬」でも、なんだかんだと100〜200万円はかかります。

当社の「葬儀信託プラン」では契約金が20万円。家財道具の処分費用や死後事務の手数料などをあらかじめ預託金として、必要な金額を信託財産として保管します。依頼者の希望を聞いて亡くなった後に死後の事務を実施するものです。

 

独り身の葬儀はどうする?

独り身の場合、最後の時もひとりかもしれません。死んだ後のことは誰がやってくれるのでしょうか。北日本シルバーライフ協会では、亡くなった後の葬儀、収骨したあとの納骨まで行います。年金などの公的サービスの停止や、水道光熱費といった各種解約も確実に遂行します。自分がこの世にいなくなった後も安心を提供しています。

もし、孤独死した場合、当社などに契約していないケースでは、市町村の職員が自治体の公費で火葬と埋葬をします。住居の家財道具などは、家主さんが自費で処分することになります。また、水道光熱費をはじめとする未払い分は、支払われないままになります。

「人に迷惑をかけたくない」と、自分の死後についても「ちゃんとしておきたい」という人が増えています。

 

信託財産は国が守る

当社が万が一倒産といった事態になった場合はどうなるのか。契約料は残念ながら戻りませんが、信託財産に関しては法律によって守られるようになっています。お預かりしている預託金については全面的にお返しできる国の制度になっています。

 

終活は早くから想定しておく

昨年くらいから60歳代や50歳代の人が「話を聞きたい」と、事務所を訪問される人が増えてきました。最近の週刊誌が特集を組んだ影響かと思っています。みなさんの危機感が増加しているように思います。

今、平均寿命は長くなり、健康寿命も延びてきています。しかし、今後のライフプランを立てて実行していくには、あまり長い時間は残されていないかもしれません。

いわゆる「その時」が意外と早いかもという想定で、するべきことをしておくことが安心につながると考えています。

 

 

終活アドバイザー 田澤利明(たざわ・としあき)

1956年、札幌市生まれ。北海道教育大卒、小学校の教員・校長を経て2017年、北日本シルバーライフ(株)に入社。2018年、代表取締役に就任。

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