行政書士 原先生にインタビュー!①入管業務の現状を語る

みなさんは行政書士という資格を聞いたことはありますか?

耳にしたことはあるという方が多いとは思いますが、実際にどのような仕事をしているのかイメージできる人は少ないのではないでしょうか。

そんな、行政書士の仕事の一つに入管業務があります。

今回は、行政書士法人第一事務所 行政書士の原先生に入管業務についての質問をしてみました。

ーーコロナ禍によって、外国人の日本への入国や滞在を取り扱う入管業務は打撃を受けたと思いますが、いかがですか?

よくコロナの影響で外国人の数が減ったという話を聞くのですが、留学や就労といった目的で在留する中長期在留者の数はコロナ前と比べて減ってはいないんです。

統計では昨年2022年6月までの半年ごとのデータが政府統計で公開されていますが、直近の2022年6月は296万人ほどの外国人が日本に在留しています。

直近では2021年12月が276万人と近年では最も少なかったのです。これは恐らく2020年3月頃からコロナの流行で出国に制限がかかり、「帰国困難」で在留していた外国人が帰国してしまったことで減ったものと思います。

コロナ禍直前の2019年12月の同じデータでは在留外国人が293万人ですから、コロナ禍では微減と言ってよいのではないかと思います。また、新規で国外から入国する場合には「在留資格認定証明書交付申請」、いわゆる「ビザ」の申請を要しますが、この申請の数についてはそこまで大きく変わってはいないのです。

これは毎月統計が公表されていますが、3月で見てみると2023年は1800件強ですが、コロナ禍真っただ中だった2021年3月でも同程度の申請がありました。特定の月だけ抽出したものなのでこれだけで断定はできませんが、少なくとも申請件数ベースでみればそこまで大きな影響は実はありませんでした。

ただ、町中から外国人がいなくなったような気がするのは気のせいではありません。なぜなら「短期滞在」の外国人が大きく減ったのは事実だからです。

短期滞在はビジネスや観光、親族訪問などで90日以内の短い期間の在留資格で、このうち観光については2020年4月から2022年6月まで受け入れをしませんでした。そのため、短期滞在の外国人の数は大幅に減りました。

ーーコロナ以前、コロナ禍、アフターコロナで入管業務に変化はありましたか?

コロナ禍での申請は許可後も入国する際に「水際対策に基づく隔離」の計画を立てる必要があったり、そもそも申請時に想定していた計画と相違が生じることも少なくなかったため許可後も大変であった印象はあります。

アフターコロナはまだ始まったばかりなので何とも言えませんが、特定技能という在留資格の運用が本格化しており、今後も入国者は増えるものと思われます。

ーー特定技能という言葉が出てきました、ニュースでも目にする機会が増えています。特定技能について簡単に教えてください。

特定技能は2019年4月に始まった新たな在留資格です。

全部で12分野14業種、もとは14分野だったのですが、働き手不足の分野・業種について外国人を受け入れることを認めたものです。

ほかの在留資格との違いは「単純労働が可能」という点にあります。というのも、これまでは単純労働が可能な労働系の資格が存在しなかったのです。

もっとも、単純労働に外国人を従事させることが全くなかったかと言えばそうではありません。実際には「技能実習」という在留資格で受け入れた外国人に技能を伝えるという名目で単純労働をさせることは一律で違法とされていたわけではありません。

また、ほかにも外国人留学生を日本にある学校に入学させ、アルバイトとして週28時間以内の労働に従事させるため囲い込んでいるということもあったようです。これらは即違法、不法就労であるとまでは言えないものの本旨に反した状況であり、劣悪な雇用環境で逃げ出す外国人もいて、そういった外国人が不法在留者として治安悪化の要因にもなっていました。

勿論ごく一部の話ではあるのですが…こうした、制度の趣旨と実態が即していない状態で外国人を在留させ、就労させるのは良くないということから新たに設けられた制度です。

ーー人手不足を外国人で補うということは安い賃金で働いてもらうための制度ということでしょうか?

これは断言できますが、そういった制度ではないです。企業からそんな話を頂くことがありますが、はっきり言って日本人を雇用するよりはコストがかかります。

賃金は「同等の日本人以上」であることが原則ですし、制度に即して運用するには法務の面でも外国人との生活支援の面でも人手がかかります。

これらについて登録支援機関という外部に委託する方法はありますが、それにもコストが発生します。よって、コストパフォーマンスでのメリットはそこまでないと思います。

ーー特定技能が移民政策と批判されることもあるようですが、どのように思いますか。

何をもって「移民」とするのかの定義がわかりませんが、単純に中長期在留者、つまり外国人の働き手そのものは増えると思います。特定技能ではこれまで一部の分野でしか認められていなかった通算5年を超えての在留がほとんどすべての分野に拡大される見込みです。

これが意味するところは「永住」の在留資格を得る道が制度上開かれたことです。このことが「移民政策」であるという批判の要因の一つなのではないかと思います。

ただ、一方で外国人には現行法上は選挙権は認められていませんし、生活保護の受給権や再入国の権利等、日本人であれば認められている権利も憲法判例上外国人に当然に認められるものではないとされていて明確に区別されています。

これは仮に永住者となった後も外国人である以上は今の法制度、判例では変わりません。これらのことについての是非については人によってさまざまだと思いますが、少なくとも単純に働き手が増える、というだけで移民が増えるというのはミスリードな気がします。

ただ、実際には外国人が地域で生活するうえで、日本との風習の違いなどから地域の方と外国人でお互いに戸惑う場面というのはあるのかも知れません。

ーー外国人が日本で生活するのは大変そうですね。

そう思います。

そのため、入管は審査する際に外国人本人の素性なども調べますが、一方で受入機関、つまり外国人が日本で所属する学校や勤務先のことについてもしっかり審査しています。

「保証人」を選任する義務がない在留資格も多いですが、事実上受入機関が外国人本人のサポートをする、保証をすることになります。慣れている受入先であればある程度ノウハウがあるので心配ないのですが、初めて外国人を受入れる機関の場合、申請前から外国人のサポートについて相談されることもあります。

先程、外国人には日本人に当然に認められるような権利も認められていないこともありますので、法令上、実際上の日本人との違い、注意点はしっかりと認識していただく必要があります。

なお、特定技能の場合は登録支援機関、技能実習生の場合は監理団体といった外部でサポートする機関と受入機関が契約することも可能です。

ーー受入機関の負担は結構重たいですね。

そうですね、とりわけ特定技能、技能実習は受入機関の責任は特に重たいですが、それ以外の在留資格であっても負担はあると思います。

在留資格の特徴として、「行ってよい活動内容に制限がある」、「定期的に更新を要する」というものがあります。受入機関としては就労内容が在留資格と逸脱していると資格外活動、つまり在留資格がない状態で労働しているという状態になり外国人本人は不法在留になる可能性があります。

また、基本的に在留期間が定められている以上は定期的に更新をする必要があり、万一更新不許可だとその時点で帰国することになり、就労の継続が困難になります。つまり受入機関側にもリスクが大きいということです。

ありがとうございました。

今回は行政書士の原先生に、コロナによって入管業務が受けた影響、本格的な運用が始まる在留資格である特定技能、外国人の日本国内での就労についてインタビューをしました。

次回は在留資格について、さらにインタビューしたいと思います。引き続き宜しくお願い致します。

行政書士 原先生にインタビュー!②在留資格について現状を語る

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