所有者不明土地を巡る法改正について、ズバリ解説します!

所有者不明土地を巡る法改正について、ズバリ解説します!

1.所有者不明土地って?

所有者不明土地とは、不動産登記簿に書かれている土地の所有者の氏名や住所が真の所有者のものとは異なっている土地のことを指します。近年、所有者不明土地が増加しており、社会問題化しています。

所有者不明土地が発生してしまう原因としては、自分の親から土地を相続によって取得したときや、引っ越しをしたとき、結婚により名字が変わったときに、その事実を登記しないこと等が挙げられます。その背景には、現在の法制度上、上記の事実について、登記申請をすることが義務付けられていないこと等があります。

2.どういった問題があるのか?

所有者不明土地の増加に伴う問題として代表的なものを取り上げると、土地の真の所有者が分からなかったり、その所在が分からなかったりした場合、真の所有者を探すために多くの時間とお金と労力を費やすことになりかねず、土地の取引や公共事業への活用がスムーズに進まなくなるといった問題が挙げられます。

また、他にも、土地の真の所有者が自身の土地を管理することなく放置している場合、土地の真の所有者に対し、土地の管理を求めることが困難となり、土地が荒れ続け、周辺の土地にも悪影響が及んでしまうといったものが挙げられます。

そもそも不動産登記簿って?

日常生活において、不動産登記簿を目にする機会は少ないと思います。そのため、不動産登記簿について、具体的にどのようなことが書かれているのかが分からない方もおられると思います。そこで、ここで、不動産登記簿の構成、記載内容について、ザックリと解説したいと思います。

不動産登記簿は、主に4つのパートから構成されています。上から順に、①表題部、②権利部(甲区)、③権利部(乙区)、④共同担保目録です。

①表題部は、不動産の所在場所や不動産の用途、大きさ等が記載されています。
②権利部(甲区)は、所有者が誰なのか、所有者が、いつ、どのような原因により変わったのか(例:売買、相続)等が記載されています。
③権利部(乙区)は、所有権以外の権利(抵当権等の担保権)の設定状況について記載されています。
そして、④共同担保目録は、一つの債権を担保するために複数の不動産に抵当権等が設定された場合に、その不動産に関する情報が記載されています。

不動産登記簿について、大まかなイメージがつかめましたでしょうか。

先程述べた所有者不明土地増加の背景、及び、これから述べる法改正の内容は、主に②にかかわるお話です。

3.何がどう変わるのか?-ポイントは、手続の義務化と簡素化-

ここでは、所有者不明土地を巡る法改正について、皆様にとって特に重要となる事項について、紹介したいと思います。

所有者不明土地が発生することを防ぐ観点から、次のような法改正がなされました。

(1) 相続により不動産を取得した場合や住所氏名が変更された場合に、その事実を登記することが義務付けられるようになりました。

(2) (1)の登記申請について、簡略化された手続が設けられるようになりました。

これから、上記2点の改正内容について、詳しく説明していきたいと思います。

(1) 相続登記・住所氏名変更登記の義務化について

①これまでは?

これまでは、相続により不動産を取得した場合や住所氏名が変更された場合、その事実を登記する義務は課せられておらず、特段罰則もありませんでした。

②これからは?注目!

相続登記及び住所氏名変更登記が義務付けられるようになりました。

また、相続登記については、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由なく相続登記の申請をしなかった場合、罰則として10万円以下の金銭(過料)を支払わなければならなくなりました(なお、遺言により相続人が不動産を取得した場合も同様です)。

同様に、住所氏名変更登記についても、住所氏名の変更日から2年以内に、正当な理由なく変更登記の申請をしなかった場合、罰則として5万円以下の過料を支払わなければならなくなりました。

因みに、相続登記及び住所氏名変更登記の義務化と罰則の制度が始まる時期についてですが、相続登記については2024年を目途として、住所氏名変更登記については2026年を目途として始まる予定です。

但し、実際に制度が始まるのは2024年又は2026年頃ですが、制度が始まる前に相続によって不動産を取得したことを知った場合や、住所氏名が変更された場合も、登記義務が課せられることとなります。この場合、相続登記については制度開始から3年以内に登記申請をしなければならず、住所氏名変更登記については制度開始から2年以内に登記申請をしなければならなくなりますので、ご注意ください。

②これからは?

(2) 登記申請の手続の簡素化について

①これまでは?

まず、相続登記に関し、相続については、相続人が単独で登記申請をすることができました。もっとも、亡くなられた方が生前に遺言書を作成しており、遺言書において、残された相続人に対する不動産の分配方法を定めていた場合、遺言書の内容によっては単独で登記申請をすることができず、他の相続人(又は遺言執行者という遺言の内容に沿って財産の分配手続を進める人物)とともに登記申請をしなければなりませんでした。

また、登記申請についても、特段、簡略化された手続というものが存在せず、相続人全員の戸籍や不動産の固定資産証明書を取得したり、登記申請書を作成したりと、煩雑な作業が求められておりました。

また、住所氏名変更登記に関しても、特段、簡略化された手続きというものが存在しませんでした。

②これからは?注目!

まず、遺言書によって相続人が不動産を取得した場合については、これまで単独では申請できなかった場合も含めて、相続人が単独で登記申請をすることができるようになりました。

次に、相続登記に関し、相続人申告登記制度という簡略化された手続が新設されることとなりました。

相続人申告登記制度の具体的な手続の内容は次のとおりです。

  • 不動産登記簿謄本に記載されている所有者が亡くなったことと自分が当該所有者の相続人であることを法務局にいる登記官に申告する。
  • その際、自分が不動産登記簿謄本に記載されている所有者の相続人であることを示すため、自分の戸籍謄本を提出する。自分以外の他の相続人の戸籍謄本まで提出する必要がない
  • その後、登記官が、申告内容を精査した上で、不動産登記簿に申告した相続人の氏名、住所を記載する

先程、相続登記の義務化について説明しましたが、相続人は、この簡略化された手続を行うだけで、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされるようになります。

相続登記に罰則が課せられる代わりに、簡略化された手続を設けることで、相続登記の申請を促すとともに負担の軽減化が図られています。

なお、相続人が複数名おり、相続人申告登記を行った後に、相続人の間で、亡くなられた方の財産の分け方を決め(遺産分割)、不動産の最終的な所有者や

持分が決まった場合、遺産分割成立の日から3年以内に、別途、その内容を踏まえた相続登記の申請を行わなければならない点にご注意ください。

同様に、住所氏名変更登記についても、職権による住所氏名変更登記制度という簡略化された手続が新設されることとなりました。

職権による住所氏名変更登記制度の具体的な手続の内容は次のとおりです。

  • 不動産の所有者が、法務局に対し、あらかじめ、住所・氏名・生年月日等の「検索用情報」を提供する。
  • 法務局が、住基ネットを利用して、「検索用情報」を基に不動産の所有者の住所・氏名が変更されていないかどうかを定期的に確認する。
  • 不動産の所有者の住所・氏名が変更されていた場合、法務局が、不動産の所有者に対して、住所氏名変更登記をしていいかどうかの確認を行い、不動産の所有者が了解した場合、法務局の登記官が、住所氏名変更登記を行う

このように、法務局に「検索用情報」を提供した上で、住所氏名の変更後、法務局から職権による住所氏名変更登記についての連絡を受け、これに了承しただけで、住所氏名変更登記の申請が事実上なされる制度が設けられました。

先程、住所氏名変更登記の義務化について説明しましたが、不動産所有者の了承後、法務局の登記官が、住所氏名変更登記を行った時点で、住所氏名変更登記の申請が行われたものとみなされるようになります。

相続登記の申請、住所氏名変更登記の申請について、このように、自ら申請書を作成したり、必要書類をかき集めたりする必要のない簡易的な手続が設けられるようになります。

水の上を飛ぶ凧

自動的に生成された説明

4.その他にはどのようなことが変わるのか?

所有者不明土地をめぐる法改正について、上記の他にも、既に発生している所有者不明土地の利用を図るという観点から、下記のような制度が新設されることとなりました。

  • 相続土地国庫帰属制度の新設
  • 所有者不明土地・建物の管理制度の新設
  • 所在等が不明な不動産の共有者がいる場合における共有物の変更行為、管理行為を可能とする制度の創設、等

上記各制度について、皆様が利用される機会がそれほど多くはないと思われることから、本稿では解説を割愛させていただきます。ご了承ください。

5.最後に

今回、所有者不明土地を巡る法改正のうち、相続登記や住所氏名変更登記の義務化や手続の簡素化について解説をいたしましたが、今後、相続や不動産の活用等について、ご自身では対処できないような出来事に直面することがあるかもしれません。その際は、是非、法務会計プラザにご相談ください。

弁護士法人PLAZA総合法律事務所
弁護士 小熊克暢

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