休眠会社等のみなし解散について

【はじめに】

 

株式会社や一般社団及び一般財団法人(以下「一般法人」といいます。)が、強制的に解散させられてしまうことがあるのをご存じでしょうか?

会社法472条、一般法人法149条及び202条は、一定の条件を満たす場合に、株式会社や一般法人を「解散したものとみなす」と規定しています。(法律の規定に基づき解散したものとみなされるため「みなし解散」と呼ばれています。)

去る令和3年10月14日、みなし解散のための手続きが開始されました。

今回はこのみなし解散についてご説明します。

 

 

【みなし解散とは?】

 

「みなし解散」とは、一定の条件を満たす株式会社や一般法人を解散したものとみなして、法務局(登記所)が職権で(強制的に)当該株式会社や一般法人について解散登記を実施する手続きです。

 

長期間にわたって登記が行われていない会社は、一般的に既に事業の実態が存在していない可能性が高いものと考えられます。

このようないわば抜け殻のような会社を解散させずに放置しておくことは、

⑴商業登記制度に対する国民の信頼の喪失

⑵犯罪行為の助長

等の危険性があるため、休眠会社のみなし解散を定期的に行い、実態の存在しない会社の消込みを定期的に実施しようとするものです。

 

みなし解散の手続きは、平成26年以降毎年行われており、多い年(平成26年)には約79,000社、少ない年(平成27年)でも約16,000社について解散登記が実施されています。

 

 

【みなし解散の対象】

 

みなし解散手続きの対象となるのは、会社法上の「休眠会社」、一般法人法上の「休眠一般社団・財団法人」です。

 

定義は下記のとおりです。

 

休眠会社(会社法472条1項)

株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの。

 

休眠一般社団・財団法人(一般法人法149条1項、203条1項)

一般社団法人・財団法人であって、当該一般社団・財団法人に関する登記が最後にあった日から5年を経過したもの。

 

株式会社の役員の任期は最長で10年ですので、正常に株式会社を運営していれば、少なくとも10年に1回は登記申請が行われるはずです。

しかし、最後の登記が申請されてから12年を経過しているということは、その会社が休眠しており事業を行っている実態がないと思われるため、みなし解散の対象となるものです。

(役員の任期が法定されていない、特例有限会社や合同会社等の持分会社は、休眠会社に該当せず、みなし解散の対象外です。)

 

一般社団法人・財団法人の役員の任期は、理事が2年・監事が4年であるため、株式会社と同様の趣旨で、みなし解散までの期間が5年間とされています。

公益社団・財団法人はみなし解散の対象に含まれますが、医療法人・社会福祉法人・学校法人等の許認可法人は対象外です。)

 

 

【手続き・スケジュール】

 

⑴令和3年10月14日:通知書の発送

管轄の法務局から、休眠会社及び休眠一般社団・財団法人(以下「休眠会社等」といいます。)に対して通知書が発送されます。

通知書は下記のような様式で、「事業を廃止していない場合は、2か月以内に届出せよ」等の内容が記載されています。

法務省HP

 通知書例

今回の通知書の発送は、令和3年10月14日に行われました。

もし、何らかの事情で通知書が届かなかった場合も、「2カ月以内」との届出書の提出期限が延長される等の措置はありません。

このような場合、全く認識のないうちに解散登記が行われてしまう可能性がありますので注意が必要です。

 

⑵届出書の提出期限:令和3年12月14日

⑴の通知を受けた休眠会社等は、まだ事業を廃止していない場合、通知書の発送日(令和3年10月14日)から2カ月以内(令和3年12月14日まで)に管轄の法務局に「まだ事業を廃止していない旨の届出書」を提出する必要があります。

(通知書の下部が届出書になっているため、ここに所定の事項を記入して使うことができます。)

もし、この日までに届出書を提出しないと、職権で解散登記がなされることになります。

また、届出書を提出しなくても、令和3年12月14日までに、何らかの登記申請を行えば解散登記を回避することができます。

届出書を提出しても、何らかの登記申請を行わない限り、来年以降も通知書発送の対象となってしまいますので注意が必要です。

届出書を提出後速やかに株主総会を開催して役員を改選、登記を申請するのが良いでしょう。

 

⑶みなし解散:令和3年12月15日→職権での解散登記の実施

令和3年12月14日までに届出書を提出又は登記を申請しない場合、令和3年12月15日付で解散したものとみなされ、順次職権で解散登記が行われます。

 

⑷継続の期限:令和6年12月14日

上記により職権で解散登記がなされた休眠会社等は、3年以内(令和3年12月14日まで)に継続の決議をすることによって、事業を再度行うことが可能です。

継続の決議は、

・株式会社:株主総会

・一般社団法人:社員総会

・一般財団法人:評議員会

の特別決議で行います。

継続の決議を行ったら2週間以内に登記を申請する必要があります。

この日までに継続の決議を行わない場合、みなし解散が行われた株式会社及び一般法人は、清算するしかなくなります。

職権解散がなされた株式会社や一般法人を使って再度事業を行いたいと思っても、この日を過ぎてしまうとすることができなくなります。

 

⑸その他(過料について)

会社法976条・一般法人法342条には、役員の改選や必要な登記申請を怠ると、100万円以下の過料が課される旨が規定されています。

上述のとおり、株式会社は少なくとも10年に1回、一般法人は少なくとも2年に1回役員を改選し、改選を行ったら2週間以内に登記を申請する義務を負ってます。

⑴の通知を受けて、⑵の申出書の提出又は登記申請を行うということは、これらの改選又は登記申請を怠っているということになりますので、過料の対象となります。

申出書の提出又は登記申請から、数カ月程度で株式会社・一般法人の代表者宛に過料通知が届きますので、納付することが必要です。

(「過料」は刑事罰ではありませんので前科にはなりません。)

 

 

【おわりに】

 

みなし解散が行われるのは、税務署・自治体にいわゆる「休業届」を提出して、事業を停止している会社が多いものと思われます。

 

休業届を提出しての事業の停止は、廃業(解散・清算)に要する費用・手間の削減や、いつかその会社を使う・売却するかもしれないという考えのもとに、行われることが多いように思われますが、法務的な観点からみると、このような会社を放置している状態は、会社を運営していく上での最低限の義務を懈怠している状態であるだけでなく、犯罪等に巻き込まれることにもつながりかねません。

 

したがって、可能であれば、休業届を提出する前に、今一度解散・清算を行う余地がないかを検討するのが良いように思います。

 

一方で、会社の事業実態はあるものの、役員の任期の管理がしっかりなされていないために、役員の改選期を逃してしまっているケースも散見されます。

 

このような会社は、今後同じような事態に陥らないために、定款と登記簿をもって、一度司法書士等の専門家に相談をするのが良いでしょう。

 

法務局から通知書が届いたがどうしたらよいかわからないという方は、ぜひご相談ください。

 

司法書士法人第一事務所

司法書士 神沼 博充

 

【参考】法務省HP

令和3年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

休眠会社・休眠一般法人の整理作業について

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神沼 博充

(かぬま ひろみつ)
司法書士
司法書士法人第一事務所で会社法務・債務整理を担当しています。
お問合せ・ご相談は下記までご連絡ください。
☎011-231-3330(代表) 0120-050-316(債務整理専用フリーダイヤル)
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