【はじめに】
新年あけましておめでとうございます。
皆様には、健やかに新春を迎えられたことと、お慶び申し上げます。
本年も変わらぬお引き立ての程よろしくお願い申し上げます。
さて、1月というのは、その年の計画を立てたり、今年はどんな年になるのかな、と思い巡らせたりすることが多くなる月ではないでしょうか。そして、その計画や将来像を今年1年だけではなく、もっと先の未来まで延長して考えた時に見えてくるのが「人生100年時代」。
ここで、100歳になった自分を想像してみてください。100歳の自分は、生き生きと生活しているでしょうか。寝たきりで介護を受けているでしょうか。さまざまな未来を想像できますが、確実に言えることは、誰も100歳の自分の姿を予測することはできない、ということ。
そんな予測不能な「人生100年時代」に必要なものは、「備え」ではないでしょうか。備えあれば憂いなし、です。そして、将来の不安で上位にくるのが、認知症です。認知症の患者数は年々増加しています。今回は、その認知症への「備え」の一つである任意後見契約について解説したいと思います。
■任意後見契約とは
任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに,判断能力が低下した場合には,あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)に,代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
本人の判断能力が低下した場合に,家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて初めて任意後見契約の効力が生じます。任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、任意後見監督人の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思に従った適切な保護・支援をすることが可能になります。
■任意後見契約を結ぶにはどうすればよいか
任意後見契約を結ぶときは、必ず公正証書でしなければならないことになっています。公証役場へ出向いて作成するか、公証人に自宅や施設へ出張してもらって作成します。
■誰が任意後見人になることができるか
後述の欠格事由に該当がない限り、成人であれば誰でも任意後見人になることができます。本人の子、兄弟姉妹、甥姪などの親族、弁護士や司法書士といった専門家、社会福祉協議会やNPO法人などの法人を選任することも可能です。
どのような人を選任するかは、本人の選択に委ねられていますが、任意後見監督人選任の段階では、任意後見受任者に次の事由があれば任意後見監督人となることができません(任意後見契約に関する法律4条、民法847条)。
(1)未成年者
(2)家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
(3)破産者
(4)行方の知れない者
(5)被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
(6)不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
つまり、本人が選任した任意後見人が本人の財産を管理するのに相応しくない人物の場合、本人の財産、生活を保護するため、任意後見契約を発動させないこととするのです。
■任意後見契約の内容
任意契約のため、誰を任意後見人として選ぶか、その任意後見人にいかなる代理権をどこまで与えるかは、本人と任意後見人となることを引き受けてくれる人との話し合いにより、自由に決めることができます。
■任意後見人はいつから、どのような仕事をするのか
任意後見契約は、本人の判断能力が低下した時に備えて結ぶものですから、任意後見人が本人に代わって事務処理をするのは、本人が自分の財産管理等を十分に行うことができなくなってから、となります。
任意後見人の職務の範囲については、当事者の合意によるものであり、当事者の生活状況、財産状況、契約締結の動機・目的などによって異なったものになりますが、一般的に以下のような職務を行います。
・財産の管理、保存
・定期的な収入の受領、定期的な支出・費用の支払い
・生活に必要な財産の購入
・保険契約に関すること
・介護契約、その他の福祉サービスの利用契約
・有料老人ホームの入居契約
・医療契約、入院契約に関すること
■任意後見監督人の選任手続
任意後見監督人を選任するには、任意後見人になることを引き受けた人(任意後見受任者)、本人の四親等内の親族又は本人自身が、家庭裁判所に選任を申立てなければなりません。本人が自分の考えや気持ちを表示することができる状況にある限り、本人の同意が必要です。よって、本人が後見開始をまだ希望していないのに、その意思に反して任意後見監督人が選任され、任意後見人が本人に代わって仕事を始めるという心配はありません。
任意後見監督人を選任する理由は、任意後見人の事務処理が適正に行われているかをチェックするためです。本人がチェックをすることは難しいため、任意後見監督人にこれをさせることにしています。
■任意後見契約の解除
家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前ならば、いつでも、どちらからでも契約を解除することができます。この場合、公証人の認証のある内容証明郵便を相手方に送って通告することが必要です。また、双方が合意のうえこの契約を解除することもできますが、この場合にも公正証書か、公証人の認証を受けた書面によることが必要です。
任意後見監督人が選任された後には、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を受けて解除することができます。
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【おわりに】
最後までご覧頂きありがとうございます。
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