国際結婚が然程珍しくない時代になりましたが,我々の業界でよく聞くのは「配偶者のビザを取るのは大変だ…」という話です。
外国人の方が日本に滞在するには,何らかの「在留資格」が必要です。(詳細は以前私が書いた「外国人材について」の記事をご参照ください。)
在留資格の中で,結婚される外国人の方が就労系の何らかの資格を既に有していて,かつ,結婚後も引き続き当該資格を持って在留できる環境であれば問題ないのですが,結婚を機に仕事を辞めるなど在留資格の変更を要する場合には注意が必要です。この場合は,在留資格を「配偶者の身分」を根拠としたものに切り替える必要があります。
「配偶者」としての在留資格は原則として2種類あり,「日本人の配偶者等」か「永住者の配偶者等」にわかれます。ほかに,在留外国人の家族として滞在する「家族滞在」も含めることが見方によっては出来ます。名称が配偶者等であるのは配偶者の他に子も含むためです。この三つの在留資格の違いは,外国人の方が誰と結婚するのか?によって変わってきます。
日本人の配偶者等:日本人
永住者の配偶者等:永住者の在留資格をもつ外国人
家族滞在:家族滞在が認められた就労系の在留資格をもつ外国人
それぞれの在留資格の観点から,注意すべき事項を確認していきます。
<すべてに共通して言えること>
・配偶者(外国人と結婚する方)に生計維持能力があるか?
・結婚が真正のものであるか?
<家族滞在の場合>
・配偶者の在留資格が家族滞在を認めている資格かどうか?
<日本人の配偶者等,永住者の配偶者等の場合>
・「特に」結婚の真正性については厳しく問われる
・婚姻に至るまでに関わっている人(紹介者,共通の友人など)の情報も申請時に必要になる
本項では主に日本人の配偶者等,永住者の配偶者等について掘り下げます。
これらの在留資格の場合には,入管が用意した質問書に以下の点をまとめた申述書を結婚するお相手(日本人か永住者)に書いて頂く必要があります。
・お相手の住所,電話番号,勤務先情報
・出会ってから婚姻に至るまでの経緯を年月別に可能な限り詳細に記載
・初めて出会った場所,日付
・紹介者の有無,いる場合は紹介された経緯と紹介者の住所,氏名,電話番号.外国人の場合在留カードの番号など
・二人の間では何語で話しているのか
・二人の母語をそれぞれどれくらい理解しているのか
・日本で提出する婚姻届けの証人は誰か
・結婚式の有無,ある場合は場所,出席者
・二人の過去の婚姻歴
・それぞれの母国への往来歴
・強制退去歴
・二人の親族構成とその中で本件婚姻の件について認知している人は誰か
概ね上記のことを記載して質問書に答えていきます。
問題なのは,これらのことについてどの程度疎明するかです。
入管が公表している資料にはありませんが,2人の電話の履歴や電磁的方法(EメールやLINEなどのアプリ,SNSのやりとり等)をスクショして提出する必要があろうかと思います。特にLINEのようなアプリのやり取りの場合は二人のやりとりが連続してある程度残るので信ぴょう性の高い疎明資料になります。
また,他にも写真の記録で日ごろのデートや共同生活を疎明することが可能かと思います。共通の友人がいる場合には,二人の関係性について上申書を書いてもらうのもよいかもしれません。そのほか,身元保証人も可能であれば日本人の第三者に依頼したほうが良いでしょう。
他にも事案ごとに必要な書類ややるべきことは異なります。
冒頭お話した通り,在留資格の中でも配偶者の資格は厳しく大変なのです。実際にニュースでも時折「偽装結婚」での逮捕者も出ています。
何故厳しいのかというと,配偶者等の在留資格の場合,ほかの在留資格と異なり就労に関する規制(時間数や就労先について)がなくなります。つまり,こと就労面だけで見れば日本人と同じ立場を得ることが出来るのです。そのため,意図的な不正も想定されますし,入管側もそれを見越して厳しくチェックします。
外国人本人と結婚相手を入管に呼ぶなどして面談することも考えられます。
従って,真正な結婚であることは当然ながら,それを厳しい目で見る第三者(入管)を納得させる必要があると言えます。
まとめ
・外国人が結婚して得るべき「配偶者」としての在留資格は誰と結婚するかによって変わる
・在留資格を既に持っている状態であれば,上記の条件で厳しければ引き続き当該在留資格を生かすようにするのも一つの方法である
・家族滞在の場合は,一定の要件があるので要注意
・日本人の配偶者等,永住者の配偶者等は真正な結婚であることの立証が困難である場合がある
・結婚するのが日本人である場合には,親族や友人に可能な限り結婚の事実を認めてもらい協力を受けられるようにするべき
・お二人で対応が難しいと思ったら早い段階で専門家に相談するべき
以上です。弊所ではこれまで外国人の方と結婚をお考えの方のご相談を承ってきました。正直申し上げて,上記のことを説明すると思った以上に大変だと考える方が多いです。一方,在留資格が認められた場合は安定した結婚生活をおくることが可能です。お早めに一度ご相談ください。
行政書士法人第一事務所
担当行政書士 原 隆史
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