シリーズ『総務担当者のための はじめての合併』
第3回 スケジュール表の作成
このシリーズは、自社又は自社のグループ会社が合併することになり、実務を担当することになった総務担当者の方に向けて、合併の法務手続きをご説明するものです。
本シリーズの前提などについては、『第1回 はじめに(対象・前提など)』『第2回 最初に確認するべき事項』をご確認ください。
3.スケジュール
⑴ 前提など
前回ご説明した、「最初に確認するべき事項」の確認が済んだら、スケジュール表の作成に入ります。
本事例では、多くの現実の合併に合わせて、
□ A社・B社とも決算公告を行っていない。
□ A社・B社とも公告方法は官報で、公告方法の変更は行わない。
□ B社は株券発行会社ではない。
□ B社は許認可事業を行っておらず、行政庁の合併認可などを得る必要がない。
との前提で、スケジュール表について説明します。
⑵ スケジュール表
●●年4月1日を合併期日とした場合の、合併のスケジュール表の例は、下記の通りです。
⑶ 各手続きの説明
⑵のスケジュール表の①~⑪についての概要は、下記のとおりです。
⓪ 利害関係者への根回し
内部的に合併するとの意思決定がなされたら、A社・B社の利害関係者へ根回しをしておくのが通常です。
根回ししておくべき利害関係者は、A社・B社の大株主や大口の債権者(銀行など)です。根回しをしておくことで、その後の手続き(⑥債権者保護手続き、⑦株主総会など)で、反対が出て合併手続きの進行に支障をきたすことがないようにすることが目的です。
① 決算公告について
合併することが決まったら、速やかに決算公告を実施してください。
決算公告は、申込みから掲載まで中14営業日かかります。
決算公告は、遅くとも⑥の債権者保護手続きの(ア)官報公告掲載(イ)催告書発送までに掲載される必要があります。
決算公告の詳細は、次回以降ご説明します。
② 合併契約書の準備について
合併は、A社・B社の間で契約(合併契約)を締結して行います。
総務部などの担当部門が合併契約書を起案し、内部稟議・相手方当事者との調整を経て内容が確定したら、③の取締役会の承認を受けます。
合併契約書の詳細(作成方法など)は、次回以降ご説明します。
③ 取締役会について
合併契約書の中身が固まったら、A社・B社の取締役会で承認決議を行います。
この、合併契約の承認の取締役会で、合併契約承認の株主総会の招集も合わせて決議するのが一般的です。
取締役会の詳細は、次回以降ご説明します。
④ 合併契約締結
A社・B社の取締役会で合併契約書の内容が承認されたら、両当時会社が合併契約書に調印して、合併契約を締結します。
⑤ 事前開示について
合併契約が締結されたら、事前開示を開始します。
事前開示は、
⒜ 合併契約承認の株主総会の開催日の2週間前
⒝ 株主に対する通知の発送日
⒞ 債権者保護手続きの公告掲載日・催告書の発送日
のうち1番早い日までに開始する必要があります。
事前開示の開始期限に間に合うように、事前開示書類を準備しておきます。
事前開示の詳細は、次回以降ご説明します。
⑥ 債権者保護手続きについて
債権者保護手続き中、
(ア)官報公告掲載
(イ)催告書の発送
は、合併期日の1か月前までに実施される必要があります。((イ)は厳密には、合併期日の1か月前までに到達していることが必要です。)
(ア)・(イ)が合併期日の1か月前までに実施されないと、合併期日に合併の効力が発生ません。この、(ア)・(イ)を合併期日の1か月前までに実施することが、合併手続きの中で最も気を遣うところです。
(ア)・(イ)が合併期日の1か月前に実施できるように逆算して、
□ 官報公告の申込み
□ 催告書の発送準備
を行います。
官報公告は、申込みから掲載まで中5営業日かかりますので、(ア)を行うことを想定している日より6日以上前に申込みする必要があります。
同様に、期限までに催告書を発送できるように。準備(催告書起案・送付先の債権者の一覧表作成・宛名シールの作成・催告書の封入など)を行うことが必要です。発送先が少なければ1日でできる内容ですが、多い場合はそれなりに時間がかかるでしょう。
債権者保護手続きの詳細は、次回以降ご説明します。
⑦ 株主への通知
A社・B社の株主に対して、合併すること及び相手方の会社がどこであるかを、知らせる手続きです。合併期日の20日前までに行う必要があります。
⑧の株主総会の招集通知も、株主に対して書類を送る手続きであることから、⑧の株主総会招集通知に⑦の株主への通知を同封すると、株主への郵送作業が一度で済んで便利です。
株主への通知の詳細は、次回以降ご説明します。
⑧ 株主総会について
A社・B社の株主総会で、合併契約を承認します。合併期日の前日までに行う必要があります。
また、株主総会の招集通知は、株主総会の開催日の1週間前までに発送する必要があります。上述のとおり、⑦の株主への通知と⑧株主総会の招集通知を同封すると便利ですので、⑵のスケジュール表では、早目の発送としています。
株主総会の詳細は、次回以降ご説明します。
⑨ 合併期日について
合併の効力が発生して、A社とB社が1つになる日です。
合併期日の詳細は、次回以降ご説明します。
⑩ 登記申請
A社とB社が合併すると、合併期日から2週間以内に、商業登記を申請する必要があります。
登記申請は、司法書士に依頼してください。
ただ、合併は重要案件ですので、スケジュール表を作成する段階から法務のプロである司法書士を関与させ法務全般についてアドバイスをもらうとともに、並行して登記申請の準備をして、合併期日当日(合併期日が非営業日であれば翌営業日)に登記申請するようにしましょう。
登記申請の詳細は、次回以降ご説明します。
⑪ 事後開示
合併期日後遅滞なく、事後開示を開始する必要がありますので、これに間に合うように事後開示書類を準備しておきます。
事後開示の詳細は、次回以降ご説明します。
以上
以上、シリーズ『総務担当者のための はじめての合併』の第3回として、『スケジュール表の作成』をご説明しました。
次回は、第4回として、『各論 決算公告』をご説明します。
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神沼 博充
司法書士
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