第一事務所通信 Vol.10 ━ 「株式の譲渡」の手続きについて(その2) ━

「株式の譲渡」の手続きについて(その2)

【はじめに】

前回は、「株式の譲渡」の手続きについての第1回目として、株式の譲渡に必要となる手続きの、下記、1.2.について説明を致しました。

今回は、3.4.の説明を致します。

 1.【譲渡承認請求】

 2.【譲渡承認】

 3.【譲渡契約】

 4.【株主名簿の名義書換】

3.【譲渡契約】

会社による2.【譲渡承認】が終わりましたら、次は株主と買受人との間で株式譲渡の契約をします。

この点、会社法第127条は「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」と規定するのみですので、「売る」「買う」という意思表示のみで株式を譲渡することができます。

但し、後日になって株主が誰なのか、あるいは契約内容について争いが発生しないように、譲渡契約書を作成します。

株主の特定、紛争発生の防止のため、株式の譲渡契約書には、

 ・譲渡人と買受人の、氏名(又は名称)及び住所

 ・譲渡株式の内容(会社の商号・本店・種類・数など)

 ・譲渡価格(総額・1株あたりの金額)及び支払方法

 ・譲渡と買受の意思 

 ・譲渡承認の確認

以上のような内容を記載します。

—【ここでワンポイント】———————————————————————-

株式の譲渡による登記は不要? 株主は登記されない?

株主は登記事項ではありませんので、株式の譲渡による株主の変更により登記事項は発生しません。何千人・何万人もの株主がいる会社もありますので、登記事項が膨大になるのを防ぐためと考えればイメージし易いかもしれません。

これに対し、発行済株式の総数は登記事項ですので、株式の譲渡ではなく、増資すなわち会社が新株を発行して新たに出資する株主が増える場合には、登記を申請します。

———————————————————————————————————-

4.【株主名簿の名義書換】

株主と買受人との間で3.【譲渡契約】が完了しましたら、次は株主名簿の名義書換です。

株主は登記されず、会社は株主が誰で何株持っているのかを株主名簿で管理しています。そこで、株主名簿の情報を書き替えるため名義書換の請求をします。

会社法第130条は、買受人の氏名等を株主名簿に記録することで、株式の譲渡を会社に対して主張することができる(このことを「対抗」と言います)と定めていますので、株主名簿に買受人の氏名等が記載されることで、買受人は会社に対して、株主であることを主張できることになります。

なお、この名義書換請求は旧株主と買受人が共同して会社に請求します。

以上の手続きを経ることで、株主の地位は売主である株主から買受人に移転します。繰り返しとなりますが、株式譲渡に必要となる一連の手続きは、

 1.【譲渡承認請求】

 2.【譲渡承認】

 3.【譲渡契約】

 4.【株主名簿の名義書換】

となります。これを図にまとめると、下記の通りとなります。

【まとめ 及び 手続きの必要性】

以上、「株式の譲渡」の手続きについて(その1)(その2)を通じて、株式の譲渡手続きについて説明を致しました。

株式の譲渡は、(その1)で説明したように、新任の取締役に株式を取得してもらう、あるいは持株比率の調整など色々な動機のもと発生します。

では、株式の譲渡手続きを適法適正に行う必要性はどうでしょうか。

 

誰が株主であるかは登記されません。また、好ましいことではありませんが、譲渡手続きに瑕疵があっても、例えば、株主が親族間に留まっている限りトラブルは現実化しないかもしれません。

しかしながら、将来親族外への事業譲渡の可能性がある、あるいは第三者から出資を受ける可能性があるといった場合には、譲渡が適法適正に行われ株主が確定していること、株主が誰であるかを保証することは事業譲渡を進める、出資を受けるために重要な事項となります。

また、株主は議決権を行使することで、株主総会において取締役を選任することができますので、株式譲渡による100%の株式の取得 → 取締役・代表取締役の選任 という手続きにより、株式譲渡をM&Aの手法として活用をすることもできます。そのような場合においても、これまでの譲渡手続きが適法適正に行われていることは大変大切なことです。

これまでに述べたように、株主の正確な把握のため、株式を譲渡する際に手続きを適法適正に行うことはとても大切なことと言えます。

以上となります、ご覧頂きありがとうございました。

【ご案内】

今回は、「株式の譲渡」の手続きについての第2回目として、株式の譲渡に必要となる手続きの、下記、3.4.についてご説明を致しました。

1.【譲渡承認請求】

2.【譲渡承認】

 3.【譲渡契約】

 4.【株主名簿の名義書換】

次回以降は、株券発行会社における譲渡手続き と 株券 のご説明を致します。

当事務所では、株式の譲渡への対応の他、M&Aに関連して、

・契約書や各種書面の作成

・法務のアドバイザリー

・登記

など各種業務のご相談・ご依頼を承っております。

自社・関与先企業様についてのご相談などございましたら、お気軽にご連絡くださいませ。

司法書士法人第一事務所

司法書士 大沼 吉裕

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です