シリーズ『総務担当者のための はじめての合併』 第4回 各論 ⑴決算公告

 

シリーズ『総務担当者のための はじめての合併』
第4回 各論 ⑴決算公告

このシリーズは、自社又は自社のグループ会社が合併することになり、実務を担当することになった総務担当者の方に向けて、合併の法務手続きをご説明するものです。
本シリーズの共通の前提などについては、
『第1回 はじめに(対象・前提など)』
『第2回 最初に確認するべき事項』
『第3回 スケジュール表の作成』 をご確認ください。

さて、今回から、合併の手続きの中の個別の手続きについて、「各論」として詳しくご説明します。
ご説明の順序は、『第3回 スケジュール表の作成』 中のスケジュール表 の順序に従いますので、「今どこの手続きについての説明か?」分からなくなってしまった場合は、スケジュール表 を確認してみてください。

 

今回は、⑴決算公告についてのご説明です。

 

4 各論

 

⑴ 決算公告について

① 決算公告とは?
全て株式会社は、毎年定時株主総会で決算承認が行われたら、遅滞なく貸借対照表(の要旨)を開示することが義務付けられています。この貸借対照表を開示することを、「決算公告」と呼んでいます。
決算公告は、会社の定款や登記簿謄本に「公告をする方法」(公告方法)として記載されている方法で行います。公告方法は、「官報」「日刊新聞」「電子公告」(自社のWEBサイトに公告を掲載する方法)の3種類が認められています。決算公告を行う前に、自社の定款や登記簿謄本で公告方法を確認してください。

② 合併手続きと決算公告
決算公告は、合併のような大きなイベント事が無くても、毎年実施する必要があるものです。したがって、本来決算公告は合併の手続きそのものではありません。
しかし、合併手続き中、債権者保護手続き(スケジュール表 ⑥)の中で行う官報公告 と債権者に発送する手紙(催告書)に、直近の事業年度の決算公告が行われた場所(媒体名・掲載日・掲載頁・URLなど)を記載する必要があるものの、実際には多くの株式会社が決算公告を行っていないことから、決算公告は、多くの合併で手続きの一環として行われます。

③ 決算公告を行うのはA社?・B社?・両方?
決算公告は、全ての合併当時会社が行う必要があります。本例で言えば、存続会社であるA社・消滅会社であるB社の両方が行う必要があります。存続会社・消滅会社のどちらか一方が行えばよいものではありませんので注意が必要です。

④ 決算公告掲載までの具体的な手続き
(ア)公告方法の確認
既述のとおり、決算公告は、A社・B社の定款・登記簿謄本に記載された「公告をする方法」(公告方法)で、行う必要があります。
公告方法には、「官報」「日刊新聞」「電子公告」の3種類があります。決算公告掲載までの手続きは、自社の公告方法が上記のうちどれになっているかによって異なります。

(イ)申込みから掲載まで

⒜ 公告方法が官報の場合
(ⅰ)申込み
公告方法が官報の場合、全国の官報販売所 店に連絡をし、決算公告を依頼したい旨を伝えます。その後、その官報販売所に、必要な書類を送ります。
必要な書類は、下記のとおりです。
□ 最新事業年度の貸借対照表
□ 最新事業年度の損益計算書
□ 自社の登記簿謄本
上記の書類を送ると、官報販売所で決算公告の原稿を作成してくれますので、内容を確認し、問題がなければ本申込みを行います。
(ⅱ)掲載
本申込みから中14営業日で、決算公告が官報に掲載されます。
(ⅲ)原本の受領
決算公告が掲載されると、掲載された官報の原本が官報販売所から送られてきますので、保管しておきましょう。(後日債権者保護手続きの官報公告の文案や催告書を作成するときに、決算公告の掲載された官報の掲載日・掲載頁を記載する必要があります。)

⒝ 公告方法が日刊新聞の場合
各新聞社所定の広告代理店経由で申込みを行います。必要な情報や書類などは、上記⒜と同様と思われますが、詳しくは各代理店にご確認ください。
また、申込みから掲載までの所要日数も、新聞社によって異なると思われますので、代理店にご確認ください。
原本の送付が受けられるのは、⒜と同様ですので、債権者保護手続きの際の為に、保管しておいてください。

⒞ 公告方法が電子公告の場合
自社のWEB担当者(WEBサイトの管理を外注している場合は外注先)に、貸借対照表をアップロードしてもらえるよう依頼します。
公告方法が官報や日刊新聞の場合は、貸借対照表の要旨(全部ではなく概要)を公告しますが、電子公告の場合は、貸借対照表の全体を公告することが必要です。
なお、電子公告の場合は、自社のWEBサイト上に公告がアップロードされていることで決算公告が行われていますので、「原本の受領」は発生しません。

以上

 

以上、シリーズ『総務担当者のための はじめての合併』の第4回として、『各論 ⑴決算公告』をご説明しました。

次回は、第4回として、『各論 ⑵合併契約書の準備』をご説明します。

司法書士法人第一事務所は、合併・会社分割・株式交換・株式移転等の組織再編の法務・登記に積極的に取り組んでいます。
自社が上記のような組織再編行為をすることになった担当者の方の他、関与先の企業様が組織再編行為をすることになり、法務部分のパートナーをお探しの公認会計士・税理士等の士業の先生もお気軽にご相談ください。

司法書士法人第一事務所おホームページはこちら

The following two tabs change content below.

神沼 博充

(かぬま ひろみつ)
司法書士
司法書士法人第一事務所で会社法務・債務整理を担当しています。
お問合せ・ご相談は下記までご連絡ください。
☎011-231-3330(代表) 0120-050-316(債務整理専用フリーダイヤル)
kanuma@hk-plaza.co.jp

コメント

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です