第一事務所通信 Vol.12 ━ 株券発行会社と株式の廃止ついて(その2) ━

株券発行会社と株式の廃止について(その2)

 

 

 

【はじめに】

第一事務所通信 Vol.11では、株券を発行するメリットとリスク、特に株券発行会社であるにも関わらず株券を発行しないままに株式譲渡を行った場合に、株主が誰であるか不明確になってしまうリスクについて、ご説明致しました。

今回は、そのようなリスク低減のための株券の廃止手続きについてご説明を致します。

 

【株券廃止の手続き】

株券を廃止するためには、大きく分けると以下のふたつの手続きが必要となります。

 

第1に、株券を発行する旨は定款に定められていますので、この定款の規定を削除するための株主総会決議が必要となります。定款変更を行うための株主総会決議は特別決議が必要となりますので、一般的には、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その3分の2以上の賛成で決議します。

 

第2に、株主に対する通知と公告が必要となります。これは、株券の廃止により株券が無効となってしまう(会社法第218条第2項)ため、株券を所持している株主に対して、まもなく「お持ちの株券が廃止になります」ということをお知らせするために行うものです。

以上の手続きのうち、特に第2の通知と公告については、実際に株券を発行している株券発行会社と、実際には株券を発行していない株券発行会社において内容が異なりますので、ここからはそれぞれ毎に説明を致します。

実際に株券を発行している、株券発行会社の場合

必要となる手続きは、

1.株主総会決議

・株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨

2.公告 及び 通知

・公告と株主等に対する通知の両方が必要となります。

期間は効力発生日の2週間前までに行う必要があります。但し手続きの前後・順番については会社法に規定はありませんので、株主総会の開催日までに2週間の公告及び通知を行えば、株主総会の開催日・決議日をもって株券廃止の効力発生日とすることも可能です。

3.登記申請(登録免許税は3万円です)

株券を発行する旨は登記されていますので、廃止の登記を申請します。

以上の手続きが必要となります。

——【ここでワンポイント】—————————————————-

どのような公告が必要となるのか?

会社法上、公告が必要となる場合、必ず官報で公告しなければならない場合と、定款で定めた公告方法による公告で足りる場合があります。株券を廃止する場合に必要とされる公告は、定款で定めた公告方法となります。

例えば、定款に「官報に掲載する」と規定されている場合の掲載文は以下のようなものとなります。

官報公告の場合、以上の掲載文の掲載費用はおおよそ8万円程度となります。

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実際には株券を発行していない、株券発行会社の場合

1.株主総会決議

・株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨

2.公告 または 通知

・公告と株主等に対する通知のどちらか一方が必要となります、期間は発行している場合と同じく効力発生日の2週間前までに行う必要があります。

3.登記申請(登録免許税は3万円です)

・発行している場合と同様に、株券廃止の登記を申請します。

以上の手続きが必要となります。

——【ここでワンポイント】—————————————————-

「株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」

実際には株券を発行していない株券発行会社において、株券廃止の登記を申請する場合には、2.公告または通知のいずれかで足りること、つまり通知をすることで公告が不要になることを証明するために、「株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」を法務局に提出します。

会社法には株券不所持という、株券発行会社においても株券の所持を希望しない株主がその旨を申出ることによって株券を発行しない制度があります。この株券不所持の申出をした場合、株主名簿にその株主については株券を発行していない旨が記載されます。この株主名簿を「株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」として提出することになります。

実際に株券を発行している株券発行会社においても、株主全員から株券不所持の申出をしてもらう(申出の際に、株主から株券を提出してもらう必要があります)ことで、株券を発行していない株券発行会社→公告を不要、とし公告費用を省くことが可能です。

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【まとめ・ご案内】

今回は、第一事務所通信 Vol.11に続き、株券発行会社におけるリスク低減のための株券廃止の手続きについてご説明を致しました。

株券廃止の手続きは比較的簡単に行うことが可能ですが、2.公告と通知 には2週間の期間が必要となります。いざ株券廃止の必要に迫れてから性急に行うより、事前に行うことで株券発行会社であることのリスク低減にも役立ちます。この機会にご検討されてはいかがでしょうか。

ここまで、ご覧いただきありがとうございました。

当事務所では、株式の譲渡への対応の他、MAに関連して、

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司法書士法人第一事務所

司法書士 大沼 吉裕

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