第一事務所通信 Vol.21━ シリーズ「外国人材の採用について」

第一事務所通信 Vol.21

━ 「外国人材の採用」における注意点(その1) 

━ 「外国人材の採用」における注意点(その1) ━

 

【はじめに】

 近年は企業のグローバル化,就労人口の減少などの影響で外国人採用を検討している企業様が多くいらっしゃいます。実際に日本人も多数の優秀な人材が海外で就労していますし,外国の優秀な人材も日本で活躍されています。

 外国人が日本国内で何らかの活動を行う場合は必ず「在留資格」を取得する必要があり,在留資格ごとの活動範囲内,在留期間内においてしか活動できないという制約が設けられています。これに違反してしまうと,外国人本人が「不法在留」や「不法就労」に問われるだけでなく,外国人を雇用している企業様も「不法就労助長罪」に問われてしまう恐れがあります。そのため,外国人材の採用を行うためには,まず企業様が「在留資格」についてしっかり知ることが大切です。

【そもそも在留資格とは?】

 出入国在留管理庁(以下,「入管」といいます。)のホームページに記載されている定義をご紹介します。

在留資格とは,外国人が我が国に入国・在留して従事することができる活動又は入国・在留できる身分又は地位について類型化し,法律上明らかにしたものであり,現在36種類の在留資格があります。以上,入管ホームページより抜粋)

更に在留資格には期限があります。これを在留期間といいます。

在留期間とは,在留資格をもって在留する外国人が本邦に在留することができる期間のことであり,許可される在留期間は在留資格ごとに定められています。なお,外国人は,許可された在留資格・在留期間の範囲内で活動を行うことができます。(以上,入管ホームページより抜粋)

 つまり,基本的に外国人は入管が許可した通りの活動内容(身分内容)に基づき,定められた期間だけ,定められた活動に限定して日本に滞在できるのです。

 【どんな在留資格があるのか?】

 大きく分けると2通りに区分され,外国人の「活動内容」にかかるものか「身分上の地位」にかかるものかにわけられます。そして,「活動内容」にかかるものの中で,「就労可能」なものと「就労不可能」なものに区分されます(厳密には在留資格「特定活動」は活動内容によって可否が決まるので,どちらとも区分できませんが本シリーズでは説明を割愛します)。在留資格は以下の通りです。

  

【外国人を採用するまでに検討すべきこと】

①:採用する職種に在留資格の該当性があるかどうか 

 「身分にかかる資格」であれば、どの職業に就いても問題ないので、職種を考慮する必要はありません。しかし、「活動内容にかかる資格」の場合は、職種が入管法で定められる在留資格のどれかに該当していないと在留許可されません。外国人の採用を希望する、或いは外国人から採用について応募があった場合はまずこの点を確認します。

 なお、留学や文化活動のように報酬を得ることが認められない在留資格でも、一定の要件のもとでアルバイトが認められる場合があります。その場合は「資格外活動許可」を受けています。資格外活動許可を受けた外国人をアルバイトで雇用する場合には許可された範囲内での勤務にするなど調整が必要です。(これらの詳細については次回以降に配信します。)

②:採用する外国人に在留資格の該当性があるかどうか

 在留資格の中には、当該外国人自身の学歴や職歴といった経歴などを要件としているものがあります。仮に①をクリアしたとしても,採用する外国人自身に在留資格の該当性がないと,やはり在留許可はおりません。従って採用を検討する段階で、行わせようとする職種と外国人に在留資格の該当性があるかどうかを両方検討する必要があります。

③:住居の用意・生活支援

 既に日本国内に住居がある外国人であれば問題ないのですが、外国人がまだ国外に居て住居がない場合や会社への就職に伴って転居を要する場合には注意が必要です。なぜなら、在留許可が下りた後に、どのように生活をしていくのかを、在留審査を行う地方出入国在留管理局等(これ以降、入管という)に示す必要があるためです。また、外国人の場合は賃貸物件を借りようとしても日本人同様には貸してくれない場合が多いです。従って、会社が借り上げて当該外国人を住ませるか、当該外国人を借主として連帯保証人として会社がつくのかのいずれかの方法が考えられます。どの方法をとるにせよ、住居の用意については会社が何らかの形で関与しないと困難であることを認識しておく必要があります。他にも,採用後の生活の支援についても、継続的に行っていく必要があります。外国人労働者のサポートを行う必要があることを会社としては認識しておく必要があります。(この辺は「労働者を雇用する」という意識だけでは足らず,「学生を受け入れるような心構え」でいる必要があります。)

【厄介な入管法違反(不法滞在,不法就労など)について】

 我々専門家でも,ご相談を受けた際に即答できないことも多いのが現在の入管制度なのです。それだけ難解であるということは外国人の方,或いは所属している企業様にとっては極めて難解なものであると言えます。

 ハッキリ申し上げますと,手続きそのものも煩わしいですし,何より外国人も企業様も本来的にやるべきことが沢山ある中で,入管の手続きも行わなくてはいけないので,かかる労力には大変なものがあります。そのためか,在留資格の手続きが不十分で在留期間を越えて滞在してしまっている方や、手続きに不備があり更新の際に厳しい審査を受ける方もいらっしゃいます。最悪の場合は不法在留者として扱われてしまいます。

 不法在留者には悪意がある方もいれば悪意なく知らず知らずのうちに不法在留者になってしまう方もいます。前者は論外ですが,後者の場合も最悪の場合強制退去,そこまでいかなくても次回以降の更新時に不利に働いてしまいます。

 そして企業様にとっても不法在留者を雇用している状態であれば,不法就労助長罪(入管法第73条の2第1項)で「3年以下の懲役、若しくは300万円以下の罰金」という刑事罰が科されるおそれがあります。この刑事罰はいわゆる「両罰規定」であることから、採用に関与した者(経営者、採用担当者等)個人と、法人の双方に罰が課されることになります。刑事罰を科されることは個人にも法人にも大きなダメージですが、単に刑罰を受けるだけではなく、今後外国人労働者の雇用が出来なくなってしまう可能性もあるので、注意が必要です。

 万が一、雇用した後に「不法就労」であったこと,もしかしたら過去の入管上の手続きに不備があった可能性がある場合は、速やかに入管に相談するべきです。入管は他の官公庁と比べても厳しい面もありますが,自ら申し出てきた軽微な不備については是正の方法を教えてくれることがあります。その指示に従って適正に対応してください。

 余談ですが,入管の職員は問い合わせなどをした際に基本的にあまり自分の名前を名乗ってくれません。念のため問い合わせの後は担当者の名前をしっかり伺って,回答と合わせて残しておくとよいでしょう。

 

【終わりに】

今回は、外国人材採用に関わる基本的な点及び注意点の概要をご説明しました。

次回は、外国人材をアルバイト採用する場合の注意点についてご説明します。

当事務所では、外国人の在留資格取得・更新・変更の各種ご相談・ご依頼を企業様・個人様から承っております。初回のご相談は無料で承っておりますので,お気軽にご連絡くださいませ。

 

行政書士法人第一事務所

電話番号:011-261-1170

行政書士 原 隆史

行政書士登録番号:第17010426号

取次申請者番号:札(行)19-16号

 
 
 
 
 
 
 

        

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