家族と共に暮らす自宅と、両親と祖母が暮らす実家が、数分しか離れていないという絶好の環境にあったAさん。ところが、実家のお父様が突然末期がんの宣告を受けてしまいます。お父様とAさん、それぞれの選択とは?
晴天の霹靂…父にまさかの末期がん宣告
Aさんは、お父様が所有する敷地にマイホームを建て、奥様と2人の子供と共に暮らす34歳です。数分の距離にある実家には、お父様とお母様、お祖母様が暮らしています。大切な家族がみんな目の届く距離に住んでいるため、Aさんは安心して毎日を送っていました。
そんなある日、実家のお父様が末期がんの宣告を受けてしまいます。お父様は定年まであと数年という若さだったため、家族の誰にとっても突然の出来事でした。
お父様の選択と、受け入れがたいAさんの思いとは
自身にとっても末期がん宣告は突然だったにもかかわらず、お父様は状況を受け入れました。そして、身辺整理のため、Aさんと、孫にあたるAさんの2人の子供たちに対して生前贈与を行うことを決めたのです。
お父様は、ご自身の勤める会社の司法書士に相談し、生前贈与の手続きを進めることにしました。結果として、Aさんと、Aさんの子供たち3人に対し、年間110万円ずつの贈与を2回行ったのです。
一方、こんなに早く相続を受けることになるとは思ってもみなかったAさんは、相続に関して分からないことばかりでした。また、お父様が亡くなってしまうことを思うと、相続について考えたくないという気持ちも湧いてきます。
お父様が司法書士と身辺整理を始めたことに対しても、複雑な思いを感じていました。
30代のAさんに託された父の意思と、贈り物
お父様の身辺整理や生前贈与を受け入れがたく思っていたAさんですが、少しずつそこに込められたお父様の思いを理解し始めます。
例えば、後継ぎではないAさんの弟には、生前贈与が行われていないこと。
お父様が暮らす実家には、Aさんのお母様とお祖母様が引き続き暮らしていくこと。
そういった事柄から、「家の跡取りとして、妻と母の面倒を頼む」というお父様の意志を汲み取ったのです。
Aさんはまだ30代ではありますが、お父様の意志を託されたことによって、自身の奥様や2人の子供たち、そしてお母様やお祖母様を守っていくという使命感を強く持つことになりました。
お父様からAさんへ贈られたのは、財産だけではありません。家長として家族を守っていくという強い責任感と決意だったのです。
現在のAさんは、世帯主として2つの家と家族を守っています。
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